大阪高等裁判所 昭和24年(を)2147号 判決 1949年11月25日
被告人
井上由太郞
主文
本件控訴は之を棄却する。
当審の未決勾留日数中百五十日を本刑に算入する。
理由
弁護人山田一太郞の控訴趣意第一点について
しかし原審公判調書によれば所論の告訴人及被害者の供述を録取した書面は原審に於て弁護人が証拠とすることに同意したことが明白である。そもそも刑事訴訟法第三百二十六條によれば、この樣な書面を証拠とするについては被告人の同意を要する事まことに所論の如くであるが、弁護人は被告人の意思に反しない限り包括的代理権を有するものであるからかかる書面を証拠とする事につき弁護人が同意した以上、被告人において即時これを取消したような形跡の認め難い本件にあつては同條にいわゆる被告人の同意があつたものと解するのが相当である。